白リス親子とあそび場「ぽんぽろ」
クラフトキッチンのイラスト、白リスさん。
ママリスの脇から、目をキラキラさせた子リスがのぞいています。
それは、パッケージなどをデザインしてくださったデザイナーさんが、わたしのあそび場への想いをスパイスのイラストにも表現したい、と発想してくださったからでした。
このイラストは今、わたしや、クラフトキッチンのスタッフになってくれたママたちみんなの気持ちを表し、支えてくれています。
2020年春に、わたしはクラフトキッチンを正式に開業しました。
起業など考えたことなど全くなかったこのわたしが、どうして開業などという大それたことを決心したのか。
それは、「こどものあそび場設立」と「スパイスの事業」という一見全く畑違いに思えるこの2つのことが、私の中でちゃんとつながったからでした。
ちょっと長いお話ですが、読んでいただけたら幸いです。
あそび場って、なに?
あそび場、と聞いて、みなさんはどんなイメージを思い浮かべますか?
「遊ぶ」ってことに、どんな意味を感じますか?
遊ぶこと。
それはとても自由で、自発的で、ワクワクすること。
遊ぶことは、意思も責任も全部、自分の中にあります。
何をして遊ぶ?
誰と遊ぶ?
どこで遊ぶ?
どのくらい遊ぶ?
自分で考えて、自分で決めて、自分で行動する。
それが、遊ぶこと、です。
遊んでいれば、いろいろ起こります。
楽しいこと。
ワクワクすること。
あんまり嬉しくないこと。
とっても悲しいこと。
そしてそれを全部自分で受けとめること。
この「遊ぶ」という中に含まれる心の体験を素直に自然に練習できるのが「あそび場」だと思っています。
いわば、「あそび場」という名前の、人生の大切な、心のトレーニングジム。
小さな子も、大きな子も、そして大人も。
自分で、自分のいろいろなところを、開いていく。
閉じていたところを開くのって大変だけど、生きていれば、どこかで必ずそれが必要になる場面はやってくるから。
その練習です。
心のトレーニングジムには適齢期があります
そんなふうに心を練習する適齢期は、何といってもこども時代。
特に幼児期から10歳くらいまでの時期が、本当に最適だと思います。
なぜなら、とても辛いことから学びとる時の心の傷が、大人よりずっと浅いし、回復力も力強い。
この時期のこどもたちが持つ、すばらしい能力です。
ちゃんと心の練習ができる環境にその歳の子がいれば、心はどんどん成長します。
こども自身が自分で立ち向かい、乗り越える。
大人はそんなこどもたちを励まし、寄り添い、支える。
するとこどもの心は、柔らかく、強く、温かく、なります。
あそび場「ぽんぽろ」のはなし
2016年秋から、わたしは地域のママたちと一緒に上士幌にあそび場を創りました。
名前は「ぽんぽろ」。
アイヌ語で、小さいを意味する「ぽん」と、大きいを意味する「ぽろ」を一緒にした名前です。
小さな子も大きな子も、小さな事も大きな事も、みんなで楽しんじゃおう!という気持ちを込めてみんなで決めた名前でした。
ぽんぽろが心のトレーニングジムとしてのあそび場に育っていくように。
スタッフみんなで何回も何回も話し合いました。
運営するスタッフは私も含め、全員ボランティア。
理解ある地域の方々のおかげで町の集会所を無料でお借りし、参加者からおやつなどの実費だけをいただいて運営していました。
まだ首も座らない赤ちゃんを連れてやってくるママ。
「近所の子も私がお母さん替わりするから!」とたくさんの幼児さんを連れてきてくれるママ。
引っ越してきて間もない、緊張した顔のママとこども。
そして、たくさんの学校帰りの小学生。
1年生から6年生まで、男の子も女の子も、ワイワイガヤガヤ、来ていました。
1週間に1回、午後の数時間。ふだんは20~30人くらいの参加がありました。
いつもいろんな歳の子たちとおとなたちが入り混じって、部屋でも外でも、場のいろんなところで、それぞれいろんなことをして過ごしました。
クリスマス会、夏のスイカ割り、秋のプチ運動会、おやつやさんごっこ、手打ちうどんを作って食べよう…のようなお楽しみ行事のときは、大人も入れたら60人以上も集まる時もありました。
スパイスも、始まる
それと並行してスパイスのことも、その子育て中のママたちに導かれて始まりました。
安心安全、そしておいしい十勝の食材を、こどもたちに家族に手料理したい、というママたちの声は、わたしのまわりにあふれていました。
例えば。
一般的な食品の、添加物や必要以上の油脂・砂糖・塩に悩むママ。
好き嫌いの強い我が子に悩むママ。
毎日の料理の手間や、「おいしく作りたい」という想いとの、葛藤。
私のオリジナルブレンドスパイスは、そんなママたちの生の声と、わたしの元来のくいしん坊気質のコラボレーションで、1つ1つ生まれ、進化していきました。
ぽんぽろがなくなったこと
そして。
ぽんぽろは、2019年春に解散しました。
運営に不可欠な「資金」と「スタッフの世代交代」に無理が生まれ、気が付いた時には、その無理はどんどん膨れ上がっていました。
そのことに真剣に向き合う機会がないまま、ぽんぽろは解散するしかありませんでした。
その後、こどもたちから向けられる「なんでぽんぽろやらないの!なんでなくなっちゃうの!」という強い声に、わたしは何度も打ちのめされました。
必要だと思って、こどもたちのためを思って創ったのに、こちらの都合で、結局こどもからぽんぽろを奪ってしまった。
無念さ、自責の念、無力感。
ぽんぽろを再建する!
ぽんぽろがなくなり、時間がゆっくりと経つ間、わたしの想いはどこにあるのか。
なかなか向き合うことができませんでした。
それでも理解してくれる友人に助けられ、少しずつその気持ちと向き合うようになりました。
そしてたどり着いたのが、「やっぱりぽんぽろは必要だし、やりたい!」という強い想いでした。
でも、それはどうすればかなうのか。
その時に見えたのが、スパイスのことと、あそび場ぽんぽろの、根っこの部分でした。
両方とも、ママたちに導かれて一緒に築いてきた世界。
同じ根っこから伸びた、二つの幹。
ママたちとスパイスを販売して資金を作って、ぽんぽろを再建する。
資金が無くて終わってしまったあそび場を、社会的にも今度こそちゃんと立ち上げる。
もう、途中で終わってしまうことがないように、ちゃんと。
あの時放置してしまった苦手な資金面のこともしっかり考えて、参加してくれるこどもや大人の想いが、ちゃんとつながって、開き続けることのできる場になるように。
スパイス一瓶に想いを込めて
ぽんぽろのスタッフだったり、参加してくれたりしていたママたち。
その中の何人かは今、クラフトキッチンをしっかりと支えてくれています。
そして、その輪からまた新しい輪が生まれ、支えてくれる人たちがゆっくりと増えてきています。
そのまた輪から新しい輪が…
輪が、続いていくこと。
とっても大切な流れ、です。
みんなが、無理なく楽しくお仕事をしながら、こどもたちのあそび場を創れたら。
1つ1つのスパイスの小さな瓶に、「おいしい」「たのしい」の気持ちを込めて。
北海道の小さな町上士幌から、スパイスと、こどもたち大人たちのあそび場への想いを発信していきます。
そしていつか新生ぽんぽろを再建して、未来を創るこどもたちを、しっかり育むお手伝いがしたいのです。
そこに集まる、こどもたちのためにも、おとなたちのためにも。